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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)670号 判決

被告人

大森藏二

主文

本件控訴を棄却する。

理由

論旨第一点について

原審公判調書を閲するときは、檢察官は原審が任意に付した番号(一)乃至(六)の証拠の取調請求を同時に爲し裁判官はこれ等を孰れも採用し訴訟関係人の意見を聞いた上で右の順序によつてその取り調べをしたことが認められる、而して右の最後の(六)の所論供述調書は刑事訴訟法第三百一條に規定する被告人の供述が自白である証拠であることは明白である、然りとすれば、右の自白調書の取調請求は、その時期において明らかに刑事訴訟法第三百一條に違反したものであることは所論の通りである、しかしながら同條の法意は專ら裁判所において犯罪事実に関する予断を懷かしめないことにあるものと解するから本件の場合のように右の自白調書が他の証拠の取り調べがなされた後において取り調べがなされている限り、たとへその取調請求の時期において右の違反があつたとしても、それはすなわち判決に影響を及ぼさない訴訟手続に関する法令の違反と見るべきであつて、所論の如く断定するのは妥当でない帰するところ論旨は理由がない。

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